Story

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「こら、遅刻だぞ!」

約束の9時を少し回った頃、彼が駅に着いた。
「ごめんごめん、寝坊しちゃった」
「じゃあバツとして、今日は荷物係ね」
そう言うと彼女は、両手で前に持っていたバッグを差し出した。中には、彼女が早起きして作ったお弁当が入っている。そのバッグを左肩にかけながら、
「今日はどこに行くの?」
と、デートの約束をしたものの、どこに行くか聞いていなかった彼が尋ねた。
「まだ秘密。ミステリーツアーだと思って」
彼女は笑いながらそう答え、いくらの切符を買えば良いかだけ教えてくれた。

改札を抜け、ホームで電車を待つ二人の間は微妙な距離だ。
「ねぇ、もう一つ遅刻したバツを追加しても良い?」
彼の方に一歩近づき、彼の目をまっすぐに見ながら彼女が言った。
「デートなんだから、一日中私と手をつなぐこと!」
彼女にそう言われ、彼は笑いながら彼女の手をとった。

嬉しそうに微笑む彼女と彼が立つホームに、グリーンとオレンジの2色に塗り分けられた電車が滑り込んできた。

Created: 2005-10-11 05:31 Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved.
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