Story

episode 38

「あっ!」

思わず声が出てしまった。

先週末にオープンしたばかりのショッピングセンターの一角にある映画館。夕方の6時少し前にチケットカウンターに並んでいた彼は、カウンターの中にいる女性を見て驚いた。そこには、3月まで同じクラスだった彼女がにっこり微笑んでいた。

マニュアル通りと思われる挨拶の後、彼は映画と上映時間を告げ、空いている席を探してもらった。あと1時間ほどで始まるためか、既に8割ほどの席が埋まっている。

前から10列目の中程に、2つ隣合わせであいている場所があったので、その片方に決め、彼女に伝えた。彼女の指がマウスをクリックし、席が確保された。カウンター越しに見えるモニターで、その席が緑色に選択されたのが確認できた。

右手の人差し指を口元に運び、少しだけ何か考えた彼女の手がマウスに戻ると、その隣の席も緑色に選択された。

「あれ? 俺一人だけど」
彼のその言葉に、彼女はカウンター越しに彼の方に顔を近づけた。
「私と二人じゃ不満? 6時でこのバイト終わるし、この映画ずっと見たいと思ってたから」

彼女の指がキーボードの上できれいに動き、発券処理が進んだ。モニターに表示された金額の半分を彼に告げ、受け取った料金に自分の分を追加して、レジに納めた。数秒の後、発券機から出てきた2枚のチケットを、彼女は彼に渡した。

「すぐに着替えてくるから、あそこのソファーで待ってて。お腹すいちゃったから、映画が始まる前に何か食べに行こうよ」

「Closed」と書かれたプレートをカウンターにセットすると、彼女はもう一度彼の方を見て微笑んだあと、小走りにスタッフルームに入っていった。

Created: 2007-07-21 09:21 Copyright © 2007 Setsu. All rights reserved.
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