Story

episode 37 prev 2of2

3袋目の

ポテトチップをカートに入れようとしていた時、突然後ろから声がした。
「そんなに食ったら太っちまうぞ」

日曜日の午後4時。スーパーのお菓子売り場で買い物をしていた彼女は、どこかで聞いたような声だと思いながら振り返った。そこにはニコニコ笑いながら、向かいの家に住む彼が立っていた。

「突然話しかけないでよ、びっくりしたじゃない」
「悪い悪い」

そう言いながら頭をかく彼の右手にはチョコバー、左手には500mlのミネラルウォーターのペットボトルが握られている。

「でも、そんだけ一人で食べたら本当に太っちゃうぞ。大丈夫か?」
「いくら私でもこんなには食べられないわよ。来週親戚が家に集まるので、そのための買い出し」

ニヤニヤしながら聞いていた彼の後ろから、彼女の母親が現れた。
「あら久しぶり、相変わらず元気そうじゃない」
二人の前に来た彼女は、並んでいる二人を見比べながら微笑んでいる。

「彼ったら、私がこのお菓子を全部食べると思ってるのよ」
「幼なじみが突然太ったりしたらいけないと思って、忠告してあげただけじゃん」

二人の話を聞いていた彼女は、何かを思いついた様子で、ハンドバッグの中をゴゾゴソやっていた。
「夏休みが始まって10日も経つのに家でゴロゴロしているだけなんて、確かに太りかねないわよねぇ」
見つかったものを彼に手渡しながら、彼女が続けた。
「この間ここで買い物したときにもらったプールの割引券なんだけど、二人で行ったらどう?」

「ほぉ、プールか。たまにはいいかな」
「え〜、あなたと二人で?」
「いいじゃない。二人で行くなんてすごく久しぶりでしょ? 6月に買ったビキニだってまだ一度も着てないし」
「ゴックン」
おどけてみせる彼に向かって、彼女が言った。
「想像しすぎて、そのチョコバー食べて鼻血出したりしないでよね」
「やばいかも。もう頭の中で悩殺されかけてる」

彼のその言葉に、皆笑顔になった。

Created: 2007-08-05 15:40 Copyright © 2007 Setsu. All rights reserved.
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