Story
「いったい
どこに消えちゃったのよ?」
彼女の前の席に座っている友人が振り向きながら言った。
「階段の下で誰か騒いでいると思ったらあなたが座り込んでるし、そのあと二人でどこかに行っちゃうし」
その友人は夏休み明けの席替えで彼女の前の席になった。それ以来、休み時間になると良く話すようになった。
「横を見ながら階段を降りてたら、踏み外して転んじゃったの」
「横じゃなくて彼の方を見ながらの間違いじゃないの?」
友人はニヤニヤ笑いながら続けた。
「文化祭が終わったら皆で集まって一緒に帰ろうって約束忘れてたの?」
「あっ… ゴメン、すっかり忘れてた」
「もぉ… で、彼と二人でどこに行ったの?」
「彼と二人って言うけどさ、あの時はまだ彼じゃなかったんだよね」
「あの時はまだぁ?」
さらに友人が言葉を続けようとした時、始業のチャイムが鳴り、英語の教師が教室に入ってきた。
「あーぁ、良いところだったのになぁ。続きはまたあとで聞かせてね!」
そう言って前を向いて座り直す友人の後ろで、彼女はシーバスに乗った時のことを思い出し微笑んでいた。
Created: 2005-02-10 08:15 | Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved. |
このストーリーを気に入っていただけたら、こちらからドネーションしていただけると助かります。(100円です) |