Story
episode 12 |
「うわぁ!
とっても気持ち良いょ!」
木陰にバスケットを置いた彼女は、ビーチサンダルを履いたまま川の中に入って行き、大きな声でそう言った。
梅雨の間の晴れ間、二人はバスに揺られて山沿いに流れる川までハイキングに来た。昨年の夏に友人達と来て泳いだ川だ。さすがに泳ぐにはまだ早いが、川遊びくらいはできると思い彼女を誘った。
「冷たいかい?」
そう言いながらそっと足を水に入れる彼に向かって、彼女が水しぶきをかけた。
「うわぁ!」
ふいを突かれて驚いた彼が顔をあげると、水しぶきの向こうの彼女はまるで悪戯っ子のような笑顔を浮かべてこう言った。
「向こう岸まで渡ってお弁当を食べようよ」
それに応える代わりに、彼は彼女に手を差し伸べた。
Created: 2005-06-18 07:40 | Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved. |
このストーリーを気に入っていただけたら、こちらからドネーションしていただけると助かります。(100円です) |