Story
「とっても
久しぶり」と彼女が言った。
夕暮れ時の横浜港。ゆっくり進むシーバスに二人は乗っていた。
彼女は小さい頃、九里浜と金谷を結ぶフェリーに乗って外房まで海水浴に出かけたことがあった。
その時は真っ青な空と海に感動したが、暗くなってから船に乗るのは初めてだ。
彼の言うように左側の窓際の席に並んで座ると、みなとみらいの夜景がとてもきれいに見えた。
「とってもきれい」
思わず彼女の口から出た言葉に、彼も同意した。
彼には、夜景を見ながら嬉しそうに微笑む彼女の顔もとても可愛く思えた。
赤れんが倉庫からみなとみらい向かって進み、だんだん観覧車が大きくなってきた頃、右隣に座っている彼がつぶやいた。
「俺と、つきあってくれないか?」
一瞬驚いたように彼の目を見たあと、彼女は視線を観覧車に戻し、静かに頷いた。
彼女の視線の先にある時計は、6時28分を示していた。
Created: 2005-02-05 08:33 | Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved. |
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