Story
episode 41 | prev | 3of3 |
改札口を
通り抜けると、上り線を特急が通過する音が聞こえてきた。
彼が乗る下り線の次の電車までは、あと数分ある。
階段をゆっくりと下りてゆく彼がホームまであと3段の所で、腰に付けたポーチの中の携帯が震えた。
ちらっと電光掲示板を見て次の電車の到着時刻を確認した後、彼は携帯を取り出しメールを見た。
「ヤッホー」
こんなタイトルじゃ、本文を読まなけりゃさっぱり内容が分からない。
「やっとバイトが終わって、今家に帰る途中。
明日の待ち合わせの時間だけど、朝10時に駅前でいい?
それから、お昼ご飯は千円くらいまででよろしく」
明日一緒に買い物に行く約束をした彼女からだ。
休みの日に一人のアパートでとる昼食はほとんどカップラーメンな彼にとって、千円はごちそうだ。文句があるはずも無い。
あと3通来ていたメールを読んでいる彼と反対のホームに、上りの電車が到着した。
メールを読み終わり、彼女からのメールに了解の返事を書こうとした時、彼の携帯がまた震えた。
「ヤッホー」
あれ? まただと思い、本文を読むと
「前!」
とだけ書かれている。
首を傾けながら目を上げると、向かいのホームに彼女がいた。こちらを見て微笑み、手を振っている。
それを見た彼の顔にも笑みが浮かんだ。
彼が右手を上げ手を振ろうとした時、二人の間に下りの電車が滑り込んできた。
Created: 2010-12-26 08:48 | Copyright © 2010 Setsu. All rights reserved. |
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