Story
午前7時13分
彼女は玄関にある鏡で髪型を整えている。彼女がいつも家を出るのは7時30分頃だが、今週一杯は、土日に行われる文化祭の準備で少し早く家を出なければならない。
昨日の朝玄関を出たら彼にばったり会った。それも向こうから挨拶されてしまった。あまりおしゃべりが得意でない彼女は、中学時代から彼のことが気になっていたが、話し掛けられずにいた。
物凄いチャンス! 彼の通う高校は私の高校の一駅先だから、毎日一緒に行けるかもしれない! 昨日だって母親が呼び止めなければ一緒に行けたのに!
そう考えた彼女は、今日はいつになく早起きして登校準備を済ませ、こうして玄関で彼が来るのを待っている。外に出て彼が来るのを待っていようかとも思ったが、昨日のように偶然会ったことにした方が話が弾みそうな気がした。通りに響く足音がだんだん近付いて来る。彼の足音だ。間違いない。
今日は私が先に「おはよう」って言って、一緒に並んで歩こう。週末の文化祭にも誘ってみよう。
そう決めた彼女は満面の笑みを浮かべて玄関の引き戸を開け、外に飛び出した。
Created: 2005-01-29 06:10 | Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved. |
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