Story
episode 23 | prev | 2of2 |
傘を広げ
彼女は歩き始めた。緑色を基調としたチェックの傘。自分の傘よりひと回り大きいかなと思いつつ、JRの駅へと向かった。
改札口を抜け階段を上りホームに出た。この傘を貸してくれた彼がいるかと思い見渡したが、どちら側のホームにも見つけられなかった。いつもこの時間に通っているのに、彼に会ったのは初めてだ。普通の詰め襟の制服だったので、どこの高校なのかも良く分からない。
今日1日はこの傘を借りて過ごすことになるけれど、いったいいつ返すことができるだろう? 彼はきっとずぶ濡れになってしまっただろうから、授業中たいへんだろうな。お礼をしなくちゃいけないな。
ぼんやりそう考えている彼女が立つホームに、水色の電車が滑り込んで来た。
Created: 2005-03-23 07:39 | Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved. |
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