Story
episode 9 |
「ありがとう
とっても嬉しい」
彼の目を正面から見ながらそう言うと、彼女は包みを開け、手のひらにおさまる程の大きさのデジカメを取り出した。色はインディゴブルー。細かく凹凸がつけられた表面にオープンカフェの照明が反射して、美しく輝いている。
彼女のリクエストに応えて、彼からの誕生日プレゼントだ。
ひとしきりカメラを眺めたあと、彼女は「もう1つだけお願いがあるの」と言った。
「次の日曜日に、あなたのオープンカーで私をドライブに連れていって欲しいの」
助手席からの景色をカメラに収めつつ、お気に入りのコースを1日かけて走りたいのだと言う。彼が了解すると、彼女は小さなカメラを包み込んだ両手を胸の前に持ってきて空を見上げ、嬉しそうに微笑んだ。
目線の先に明るく輝く満月を見つけた彼女は、初めて撮る被写体としてこれ以上のものは無いと思い、カメラのスイッチを入れ、シャッターを押した。
Created: 2005-08-20 06:42 | Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved. |
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