Story
episode 30 |
「このお店」
と言うと、彼女は小走りに店の中に入って行った。
江ノ電の和田塚駅から数分歩いた所に、その店はあった。
彼女に続いて店の中に入ると、お香の匂い。
リングやブレスレットなど、いろいろなアクセサリーが並んでいる。手にとっては品定めをする彼女に並び、彼も陳列してあるものを眺めるが、どれも彼の興味をひくものではなかった。
30分ほどそうしていたのだろうか?
「これにする」
彼女が言ったので、彼は頷き店の外に出た。
彼は、お香の匂いが余り好きではない。
一刻も早くこの店から出たかったのだが、彼女をひとりにしておくのも悪いので、ずっと我慢していた。
外は夏の日射しで眩しいくらいだ。
すぐに彼女が出て来るかと思ったが、数分待った。
「次はどこに行く?」
彼は出てきた彼女に尋ねた。
女の子と二人で知らない町を歩くことなど初めてなので、彼はどうして良いのか分からない。
「海を見に行こうよ」
彼女の言葉に従い、二人は細い道を南に向かった。
微妙な距離を保ったまま歩く二人の脇を、自転車に乗り、サーフボードを抱えた若者が通り過ぎた。
路肩に寄ったのをきっかけに、彼は彼女の手をとった。
何か硬いものを感じたので、彼は繋いだ手を目の前に持ってきてみた。
「これが欲しかったんだ!」
少し恥じらいぎみにそう呟く彼女の指には、二人の名前を彫り込んだリングがあった。
Created: 2005-01-16 09:15 | Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved. |
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