Story
episode 26 |
午前中
ずっと会議が続き、暗い会議室に飽き飽きした彼は、暖かい日射しに誘われてオフィスから出てきた。
コンビニでおにぎり2つとお茶を買って公園に向かい、座れるところを探した。芝生広場を取り囲むようにある歩道に沿って木製のベンチが20mおきくらいに並んでいる。日射しを正面から受けるベンチの右端に彼は座り、おにぎりの昼食をとった。
1つ目を半分くらい食べ終えた時、彼から見て左側の歩道を彼女が歩いてきた。グレーのスーツに身を包み、歩き方がとても綺麗だ。ファッションモデルのような嫌みのある歩き方ではない。足先をまっすぐ前に向け、すっと前に出すだけなのだが、細い足首とふくらはぎのバランスの絶妙さと相まって、彼の視線を釘付けにした。
彼の座っているベンチに近付くと、彼女はふいに歩みを止めた。
足から視線を上にあげた彼と、彼女の目が合った。
「こちらに座っても良いかしら?」
彼女が尋ねたので、かれは左手でベンチを示しそれに答えた。
ベンチの左端に座り足を組んだ彼女は、バッグから小さな手帳を取出し、ひとしきり何か書き込んでいた。ページを前後にめくり何かを確認している彼女の様子を視線の端に捕らえつつ、彼は2つ目のおにぎりを食べた。おにぎりを食べ終えてお茶を飲み、両手を上に持っていき伸びをする彼に合わせるように、彼女は手帳をバッグにしまい立ち上がった。彼の目を見て軽く会釈すると、彼女は歩道を右に向けて歩き出した。
彼の正面を通る瞬間、彼女の眼鏡のフレームがキラリと光った。
Created: 2005-03-01 08:11 | Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved. |
このストーリーを気に入っていただけたら、こちらからドネーションしていただけると助かります。(100円です) |