Story

episode 20

「あっ!

噴水がある!」

そう言うと、彼女は小走りで噴水に近付いていった。

4月になって初めての日曜日。彼の高校や彼女の高校にある桜が満開になっていたので、天気が良くなった今日、二人は川の近くにある公園までお花見に出かけた。

公園の桜もきれいに咲いていた。しかし、桜の下にはビニールシートを広げ、酒盛りをしている人たちがいて、あまり近くまで行って見る雰囲気ではなかった。

遠巻きに桜を眺めながら、二人で公園内を歩いていると、子供向けの遊具のある一角を曲がった先に噴水があった。

先に手すりの脇まで行って、噴水を見上げている彼女の傍らに並んだ彼が「ずいぶん高くまで上がるんだね」と言うと、彼女は「ホント、5mくらいあるのかなぁ?」と彼に問い返した。

彼は返事をする代わりに自分の左手を彼女の右手に重ねると、彼女が「ほら、あそこに虹が見える」と左手で噴水の下の方を指差した。笑顔で小さな虹を見つめる二人の周りでは、時間がゆっくりと流れていた。

Created: 2005-04-13 04:53 Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved.
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