Story
episode 17 |
「うわぁ
とってもきれい」
そう言うと、彼女は道端の小さな花に向けてかがみこんだ。
5月の連休の最終日、二人はハイキングに出かけた。国道から海のすぐそばの公園迄、小川に沿って遊歩道が続いている。バスから降りた二人は手を繋いで歩き始めた。長そでを着ていると暑いくらいの良い天気だ。帽子をかぶってきて正解だったなと思いながら、彼女は目の前の小さな花を楽しんだ。日頃そんなふうに花を見ることの無い彼も、彼女の傍らに腰を落とし、じっとその花を見つめた。
程なく二人は歩き始めた。小川の向こう岸には釣り糸を垂れている老人が二人。二人とも麦わら帽子をかぶっている。「何が釣れるんだろう?」と言う彼に、「魚のことは全然わかんないの」と笑って答える彼女。
二人が歩く遊歩道の上を覆っていた木々の枝が無くなると、ぱっと視界が開け、大きな風車が見えた。
「おっ、凄い風車がある」と驚く彼に、「あそこまで、ヨーイドン!」と言うと彼女は走り出した。
右手で帽子を押さえ、彼の足音を後ろに聞きつつ走りながら、早起きして作ったバッグの中のおにぎりの角が潰れて真ん丸になっちゃうかなぁと、彼女はふと思った。
Created: 2005-05-05 11:22 | Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved. |
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