Story

episode 11

「よぉ

7月1日から高校生3人以上で映画を見に行くと一人千円だって知ってた?」
改札口に続く階段を降りながら、同級生の友人が言った。
「へぇ、いいね!」
「でも、お前と彼女の二人じゃ安くならないから、俺もつきあってやるよ」
嬉しいような嬉しく無いような複雑な表情をした彼は、なんだか御機嫌な友人と並んで階段を降りていった。
「ほら、お待ちかねだぜ」
改札口を出た向こう側、柱のそばに彼女は立っていた。二人に気がつき顔の横で手を振った。
「何すましてるんだよ、手を振らないのか? じゃあ俺が…」
と言うと友人は改札口を出ながら大きく手を振り始めた。それを見て笑顔になった彼女の側まで来ると、
「今度映画に行こうってこいつが言ってるよ。気が小さくて二人じゃ緊張するって言うから、俺もつきあうことにした」
勝手なことを言い始めた友人に軽くキックをお見舞いしたが、友人はさらに続けてこう言った。
「俺達二人で両側を固めてやるから、暗いところでも絶対安心!」
「何言ってるんだ、そう言うお前が一番危ない」
「そんなこと無いよぉ、ねぇ?」
首をかしげながら笑っている彼女を挟み、3人並んで彼等は横断歩道を渡り始めた。

Created: 2005-06-29 05:53 Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved.
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