Story
episode 10 |
「すごくきれい」
空を見上げてそう呟く彼女の隣で、彼も息を飲んだ。
毎年8月第1週目の土曜日に河原で行われる花火大会に、二人は来ていた。
何十発も連続して打ち上げられた花火のあと、彼は彼女の方を向いて自分の心の内を伝えた。その途中でまた花火があがった。彼女は彼に「今なんて言ったの?」と尋ねた。もう一度繰り返す彼の言葉を、彼女はじっと彼の目を見つめながら聞いていた。それを聞き終わると、彼女はちょっと悪戯っ子のような笑顔を浮かべ、「ホントはさっきも聞こえていたんだけど、せっかくだから、もう一回言ってもらおうと思って…」と言った。そして彼女は足下を見つめながら自分の気持ちを彼に告げた。
その言葉をきっかけに、彼は彼女の手をとった。二人とも少し照れたような笑顔になった。
そんな二人を祝福するかのように、また花火が連続して打ち上げられた。とりわけ大きな花火が轟音を立てて弾けた時、彼は彼女を見た。朝顔の模様の浴衣と彼女の横顔が、いろいろな色に染まって見えた。
Created: 2005-08-08 06:18 | Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved. |
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