Story

episode 7 prev 5of5

駅を出て

歩いていると、彼女が切り出した。
「私とつきあってくれない?」
突然そう言われ、彼は驚いた表情で彼女の方を見つめた。
「突然告白するなよ」
「ちっとも突然じゃないよ。つきあってくれるのくれないの、どっちなの?」
首を少しかしげながら、ちょと考えたあと彼が言った。
「いいよ、つきあおう」

彼の言葉を聞くと、彼女は息を吸い込みながら空を仰ぎ見た。
「よかった、OKしてもらえて」
「でも突然でびっくりした」
そう言う彼に、彼女は続けた。
「小学校3年生の時一緒のクラスだったでしょ? 春の遠足に出かけたとき、私転んで泣いちゃったんだよね。覚えてる?」
「あぁ、そう言えばそんなこともあったような気がする…」

「あの時とっても痛くてずっと泣いてたら、あなたが近くに来て慰めてくれたんだよね。それでもまだしばらく泣いてたら、『俺のお嫁さんにしてあげるから、もう泣くな!』って言ったんだよ。さすがにびっくりしてすぐ泣き止んだら、ニコニコしながら頭をなでてくれたんだよ」
「そうだっけ?」
「そう。そのあと先生が来て、二人並んで手を繋いでる所の写真を撮ってくれたの。その写真は今でも私の机の上に飾ってあるの」
「そうだったのか」
「うん、だから私にとってはちっとも突然のことじゃないんだよ。突然どころか、7年越しの思いがやっと告白できたの。あの時のあなたの言葉へのお返し」

さらに彼女は続けた。
「小学校の高学年や中学生になったら、あんまり話さなくなっちゃったけど、毎朝写真の中のあなたに『おはよう』って言ってたんだ。高校が別になっちゃったから、ちっとも会えなくて寂しいなぁと思ってたら、このあいだ自転車とぶつかりそうになったでしょ。ほんとにビックリしたんだけど、ありったけの勇気を振り絞って、今日のデートに誘ったの。今朝お弁当を作りながら、『今日告白しないと後悔しそう』って思い始めて、それで、思いきって告白しちゃいました」

そこまで一気に言うと、彼女は満面の笑みを浮かべ、彼の目を見つめた。
それに答えるように、彼は繋いでいる手に力を込めた。

Created: 2005-11-26 06:47 Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved.
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