Story
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雨の予報が
出ていたのに、傘を持ってくるのを忘れていた。
4月下旬の火曜日、地下鉄の駅の階段を上ってきた彼女は、かなりひどい降りになっている雨を見て立ちつくした。ここからJRの駅までの100m程の間、屋根が無い所を歩かなければならない。今日は体育の授業が無いので、制服が濡れてしまうと着替えが無い。駅の改札口わきにあったKIOSKに傘は売っていただろうかと思い、今上ってきたばかりの階段を振り返ると、彼と目があった。
上から見下ろした時はそれほど背が高く無いかと思ったが、横まで来ると彼女の頭が彼の学生服の肩までしか無かった。彼は雨と彼女とを2-3度交互に見たあと自分の傘を無言で差し出すと、鞄を頭の上にかかげ、雨の中を駆け出して行った。
Created: 2005-03-22 07:58 | Copyright © 2005 Setsu. All rights reserved. |
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